選挙が近い今日この頃ですが、キーワードとして「年金」が聞かれます。
そんな中「マクロ経済スライド」という言葉が注目されています。
そこでマクロ経済スライドについて考えてみましょう。
マクロ経済スライドとは
年金は賦課方式という現役世代で年金額を賄う方式を取っています。
日本の出生率は減っており、将来確実に現役世代は減っていきます。一方、平均寿命が伸びていることで、年金受給者の数は相対的に増えていきます。そんなわけで現在の年金額を維持するには現役世代一人当たりの負担が大きくなります。
一人当たりの負担が大きくなってしまうのでは、現役世代はやっていけません。そのためには年金支給額を抑制するしかないのです。
そこで作られた制度が「マクロ経済スライド」です。
社会情勢に合わせて年金給付水準を自動的に調整するというものです。
2004年に制定されてから、実は2回、2015年と2019年に発動しています。今年発動していたんだ、と今更知り恥ずかしい限りです。
制度改正以来、賃金や物価の変動がほとんどなかったことが、発動回数が少ない理由です。
例えば、物価が1%上がるなら、年金給付額も1%上がらないと釣り合いません。しかし1%の上昇ではやっていけないので、給付額の上昇率を抑えて0.5%にしましょうといった感じで、実質年金給付額を減らしていることになります。
せっかく2019年度に発動してますから、具体的にどうなるのか見てみましょう。
2019年度のマクロ経済スライド発動
2019年度のマクロ経済スライド発動により、前年度に比べ0.1%の給付額上昇となりました。
「あ、増えてるんだ」と思ってしまうのですが、実質はこんな感じです。
まず物価が1%上昇、名目手取り賃金が0.6%上昇だったんだそうです。こういう場合は名目手取り賃金の0.6%を用います。
ここからスライド調整率の0.2%と未調整分0.3%を引いた、0.1%が年金給付額の上昇率となっています。
未調整分とは過去に適用されなかった分で、宝くじや競馬のWIN5にあるキャリーオーバーみたいなものでしょう。全く嬉しくないキャリーオーバーです。
賃金の手取りが増えていない私には1%の物価上昇が重くのしかかるわけですが、年金受給者にとっても実質年金が減っているようなものです。
昨年1,000円だったものは1,010円になります。でも年金は1,000円が1,001円になっただけなので、9円足りなくて買えません、ということになります。
一応、名目給付額はマイナスにならないように、ということになっているそうですが、実質はマイナスなのです。
今の年金制度を引き継ぐ、マクロ経済スライドを止めるなど、別の年金制度にするなど色々な意見が聞かれますが、現実的かつ我々の老後が守られる制度をしっかり議論してもらいたいものです。