会計の用語に「のれん」というものがあります。
のれんというとお店の入り口にかかっている布のことを思い出しますが、会計上は全く異なるものです。
M&Aとか企業買収というキーワードを聞くようになって久しくなりましたが、この企業買収が関係します。
例えば100億円の価値がある企業があるとします。しかし資産には載ってこない技術力や権利などがある企業で、これを150億円で買収するとします。つまり技術力や権利に50億円の価値を見いだしたということです。
この買収金額と企業価値の差額である50億円が「のれん」です。
この「のれん」は無形資産として資産計上されます。日本の会計基準では一定の期間で費用として消却していきます。国際基準ではのれんが収益に貢献していない場合は損失として計上することになっています。
本日、のれんに関する興味深いニュースが2つありました。
1つはコカ・コーラボトラーズジャパンホールディングスで、2019年12月期の連結最終損益が従来予想52億円の黒字から一転、567億円の赤字になりそうだとの発表をしたそうです。
17年の経営統合で発生したのれん618億円全額を減損損失として計上することになったのが原因のようです。今後短期的に現金収入が下がることが予想され、消却出来なくなってしまったとか。
もう1つはふくおかフィナンシャルグループで、2019年4~6月期連結決算は純利益が前年同期比9倍の1,286億円となったと発表しました。「負ののれん」の発生益を計上したためだそうです。
4月に十八銀行との統合をした際に「負ののれん」が発生したのだそうです。これは企業価値より安くで買収した場合に発生する利益のことです。これにより1,174億円計上したとのことです。
かたや「のれん」を減損したために大きく赤字を出したケース、かたや「負ののれん」により大きく利益を出したケースと全く正反対の結果となったわけです。
コカコーラは形のない資産を消却出来ないので損失を計上した、ふくおかFGは企業価値より安くで買収したとはいえ、その差額が現金を生み出したわけではないのに利益として計上される。
理屈は分かるのですが、目に見えない資産で莫大な利益や損失が出るというのは、なんとも雲を掴むような話であります。