非金融系FPそばこと不確実な日々

2019年2月にCFPを取得しました。FPとして知っておいた方が良さそうなことを色々と書いていきます。

日産自動車とストックオプションとSARと

ストックオプションという報酬があります。

ストックオプションとは、株価会社の経営者や従業員に一定の行使価格で自社株式を購入できる権利です。

例えば1000円で購入できる権利を手に入れた人が、自社株価が2000円になったときに権利を行使すれば、たちまち1株あたり1000円が手に入るのです。

株価が下がった場合は権利を行使しなければいいので損はしないということになります。

こういう報酬体系であれば、株価が上がったときにはより多く報酬が手に入るのですから、株価が上がるように、会社価値が上がるようにと頑張ってくれるという期待も込めての制度と言えるでしょう。


さて、ストックオプションで儲けたとして、それは当然の権利を行使した結果なので、とやかく言われる理由があるのかな。日産自動車の社長辞任のニュースをぼんやり聞きながらそう思っていました。

ところがよくよく聞いていると、ストックオプションではなくSARという制度を使っており、これにより不正に4700万円多く報酬を得ていたというのです。

SARとはストックアプリシエーションライト(Stock Appreciation Right)の略です。聞き慣れない言葉です。

これは株式をある額で保有したものとして(実際には保有していない)、指定した権利行使日に株価が上昇していた場合は上昇した額分だけ現金を受け取ることが出来るというものです。もし下落した場合は現金を受け取ることは出来ませんが損はしません。

何となくストックオプションと同じ様にも思えますが、実際に株式を取得したかどうか、また権利行使日が定まっているかどうかといった違いがあります。

SARは権利行使日が決まっていて契約書の変更なしに変えることは出来ません。今回の問題ではその権利行使日を1週間遅らせ、その結果4700万円の追加利益を得たというところにあるようです。

SARは法整備が進んでおらず、また制度が曖昧で洗練されていない、ルールが複雑で株主に説明がつかないなどの理由から導入している企業は少ないそうです。曖昧さ故に経営者に有利に運用される恐れがあると懸念する声もあるのだそうです。

日産自動車は給与の高い会社でしょうが、4700万円というのは簡単に稼げる額ではないでしょう。年収500万円の人にとっては10年近くかけてようやく稼げる額です。日本人の年収の中央値427万円から見ると11から12年かかります。

最近の日産自動車のニュースは、何百億というあまりに巨額のお金の流れのために4700万円が少額に感じてしまいますが、我々庶民の収入と並べるととても大きな額です。それを不正に受給していたとなると、いったいどんな顔をして従業員と向き合っているのかな?と思ってしまいます。いや従業員の顔なんて見えていないのでしょうね。


10日の日産自動車株価は、一時5%高の上昇を見せたそうです。前日9日の社長辞任を受けて企業ガバナンスが機能したという市場の判断と見られています。まあ何となくの感想ですが、これが民意かなという気がしますね。