非金融系FPそばこと不確実な日々

2019年2月にCFPを取得しました。FPとして知っておいた方が良さそうなことを色々と書いていきます。

セブンイレブンの残業代未払いの問題点

今年は何かと悪いニュースの続いたセブンイレブンですが、最後に残業代未払いという問題が発覚しました。それは1970年代まで遡る話とか。

サービス残業、過度な超過労働などが大きく問題となっている中、大手のセブンイレブンがそのようなことをしているとはと思いながらニュースを読み進めました。

記録に残っているだけで約3万人分、4億9千万円の未払いにのぼるようです。1970年代まで遡るとなれば、とんでもない額になることでしょう。

問題と言っても各店舗の問題でもあるのではないのか?とも思いました。しかし本部と契約するフランチャイズ店の従業員への給与計算や支払いは本部でしているとのことなので、セブンイレブン本部の問題と言っていいでしょう。

残業手当の対象となる賃金とは?

この問題でひとつ気を付けないといけないのはセブンイレブンが「残業代を払っていなかったわけではない」という点です。

基本給に対する残業代は払っていたようです。では何を指して残業代を払っていないと言っているのでしょうか?

セブンイレブンの一部の店舗では、キチンと出勤した人に払う「精勤手当」や役割に応じて払われる「職責手当」という手当てが基本給とは別に支払われているそうです。

この手当てに対する割り増しが払われていなかった、というのが今回の問題のようです。

えっ、どういうこと?と思う方もいることでしょう。この辺は結構難しい問題だとは思うのです。

私の認識だと残業手当の対象となる賃金とは「労働の対価として支払われたもの」です。そういう視点だと精勤手当や職責手当は労働の対価として支払われていますから残業手当の対象となるでしょう。

やはり正しい定義を知りたいところです。まず労働基準法第37条第5項を見てみましょう。

第一項及び前項の割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当その他厚生労働省令で定める賃金は算入しない。

あわせて労働基準法施行規則第21条を見てみましょう。

〔割増賃金の基礎となる賃金に算入しない賃金〕
第21条 法第三十七条第五項の規定によつて、家族手当及び通勤手当のほか、次に掲げる賃金は、同条第一項及び第四項の割増賃金の基礎となる賃金には算入しない。
一 別居手当
二 子女教育手当
三 住宅手当
四 臨時に支払われた賃金
五 一箇月を超える期間ごとに支払われる賃金

ここからどう解釈するかということになるのですが、家族手当や通勤手当、住宅手当というものは労働の対価とはならないでしょう。

1ヶ月を超える期間で払う賃金とは例えば賞与の事だと思います。臨時報酬も含めて毎月必ず払われるとは限らない賃金は割増手当の対象外となるでしょう。

基本、上記以外の手当ては割増賃金の対象となるのではないか?と考えないといけないのでしょう。この辺の解釈が難しいところではあるのですが。

私の「労働の対価」という定義が、どこから出てきたのか怪しくなってきましたが、法律が定める対象外となる賃金から見るに次のように言ってもいいのではないかと思います。

時間外勤務をした場合に支払われる残業手当の対象となる賃金とは「毎月の給与で定期的に労働の対価として支払われるもの」。

なんとなくそれっぽいです。

これまでに色々なお客様と残業手当について話してきた経験からは、このような定義で概ねあっているのではないかなと考えています。

本当の問題点はどこにあるのか?

残業手当に含める対象が解釈に依存するとなると間違いが出ても仕方ないところがあります。どのような会社でも有り得る話なのです。

実は2001年6月にセブンイレブンは労基署から是正勧告を受けており給与計算を見直していたのだそうです。その際に割増率を125%にしなくてはいけないのに25%にしていたのだそうです。

大企業ですから給与計算システムを使っていることでしょう。この設定なり改修に問題があったと思われます。

まあこういう間違いもままあるものです。

2019年9月に、割増賃金の未払いで、ある店舗に是正勧告が入り問題が発覚したようです。

3ヶ月近く経った今頃、公表した事への問題もありますが、これほどの長きに渡ってこのような問題が社内から出てこなかったこと、これこそが問題だと思うのです。

いったいどの様なチェック体制になっていたのか、どういう認識だったのか、本当に気付いていなかったのか。

問題は間違いがあったことではなく、体制にあるのではないでしょうか?

事業拡大や利益追求に向けて革新的なことをしてきた、その分投資もしてきたと想像される同社ですが、働く人への投資がキチンとされていたのか批判されても仕方ないこのなのかな?と考えます。