20年も前の話になります。当時アメリカでは3つのプロレス団体が大きな勢力争いをしていました。
そのライバルとして存在していたのがWCW。WWFとの月曜日と木曜日の視聴率争いは激しいものでした。
そしてその2台勢力に、カルト的な存在感で迫っていたのがECWでした。
当時アメリカに住んでいた私は、今と変わらず本屋さんに行ってはプロレス雑誌を読んでいました。そこで知ったのがECWで頭角を現していたTAJIRIというレスラーです。
あれ?この人、新日本にも上がっていた青いパンツの田尻だよね?
あまりに雰囲気が変わっていたので驚いたのですが、私が知っていた田尻選手はECWでTAJIRIとして目立った存在となっていました。
その後、ECWはWWFに統合され、WCWは崩壊し、WWFはWWEと名前を変え一人勝ちとなっていく、そんな大きな流れをリアルタイムでテレビで見ることが出来たことが経験出来たのでした。
さてTAJIRI選手はECWからWWEに移籍し、そこでも大活躍をすることになります。その後、日本に帰ってきて様々な活動をして現在に至るわけです。
そんなTAJIRI選手が書いたプロレス論とでもいった書籍が「プロレスラーは観客に何を見せているのか」です。
この本の中で、かつて私が見てきたシーンの裏側が垣間見えたり、プロレスというのがどういうビジネスなのか、そして最近私がWWEをあまり楽しめないのは何故なのか、プロレスを通して感じてきたことの答えの一端が分かったように思います。
プロレス会場に行くと、ひとつのイベントの中で面白い試合と面白くない試合があります。非常に盛り上がる試合と盛り上がらない試合があります。
面白い試合、盛り上がる試合とは何なんだろう?とよく考えたものです。技術が高い、白熱しているなどなど試合のクオリティが高いからといって必ずしもいいとは限らないのです。
私の中でのひとつの答えは「心を揺さぶられたか」です。「感動した」でもいいかもしれません。
すごいレスラーというのは一挙手一投足で観客の心を掴んでしまいます。今、ハリウッドで活躍しているロックことウェインジョンソンは表情だけで観客を熱狂させていましたからね。
本の一節に「プロレスはサイコロジーである」とありました。まさにスゴいレスラーは観客の心を動かすことに長けているのだと思います。
ちなみにTAJIRI選手のエピソードの中で私が一番好きなのはエディーゲレロとタッグを組んでいた頃の話です。当時を知っていると熱くなるエピソードです。
プロレスファンには是非一読してもらいたい一冊です。