非金融系FPそばこと不確実な日々

2019年2月にCFPを取得しました。FPとして知っておいた方が良さそうなことを色々と書いていきます。

光秀の定理とモンティ・ホール問題

「光秀の定理」という小説を読みました。光秀とは戦国武将の明智光秀のことです。歴史小説の体ですが、歴史小説と言っていいのか?面白い小説でした。

この小説を通してポイントとなるのが愚息という僧侶が行う賭事です。この賭事はモンティ・ホール問題として有名な確率に関する事象です。

モンティ・ホール問題とは

アメリカのあるテレビ番組で次のようなゲームがあったそうです。

3枚の扉があります。このうち1枚の扉を開くと車があります。それ以外の2枚を開くとヤギがいます。車がある扉を開けばプレーヤーが勝ちとなります。

プレイヤーはまず3枚の扉から1枚を選びます。

次に司会者はプレイヤーが選ばなかった2枚の扉からヤギがいる扉を1枚開きます。

ここで司会者はプレイヤーに選んだ扉を変更するかどうかを問います。プレイヤーは開いていない2枚の扉から1枚を選択することができます。

ここまでがゲームです。

マリリン・ボス・サヴァントという天才がいて、この方が連載していた雑誌のコーナーに、このゲームで、最後の問いで選択する扉を変えるべきかどうか、という質問があったそうです。これにマリリンは扉を変えた方が車が当たる確率が倍に上がると答えました。

これが大論争になった、というのがモンティ・ホール問題です。

多くの人の意見は最初に扉を選択したときは3分の1の確率であった。しかし2度目の選択では2枚の扉から1枚を選択するのだから確率は2分の1、つまり変えても変えなくても同じではないか、というものでした。

マリリンはこの件で随分と批判されたそうです。今のようなネット社会だったら大変なことになっていたかもしれません。

有名な問題なので答えを先に言ってしまいますが、マリリンが正しく、扉を変えることで車がある扉を開ける確率は3分の2になります。

この問題はベイズの定理という確率論の中の事後確率というもので出てくる有名な問題なのですが、ここでは数学的な点とは異なる面から考えてみましょう。

プログラムによるシミュレーション

確率の問題はプログラムを作って試してみると実際にどうなのか分かって面白いです。

乱数を用いてシミュレーションすることをモンテカルロ法というそうです。ちなみに乱数とはパソコンでランダムに数値を求めるもので、確率問題のシミュレーションに適しています。

さて私も実際に扉が2枚になったときに扉を変更しなかった場合、車が当たる確率がどうなるかプログラムを作って試してみました。

結果は、試行回数を大きくするとおよそ33%の確率に集約されていきます。つまり扉を変えない場合に車が当たる確率は約3分の1、扉を変えた場合に車が当たる確率は約3分の2、マリリンが出した答えに一致します。

私は答えを知った上でやっているので驚きませんが、初めてモンテカルロ法でシミュレーションした人はこの結果にさぞ驚いたことでしょう。

信長が導いた答え

小説「光秀の定理」の中で織田信長がこの問題の答えを導きだします。

小説とは状況を変えて、モンティ・ホール問題に沿って考えてみましょう。

今度は扉を100枚用意します。1枚の扉を開くと車があります。それ以外の99枚の扉を開くとヤギが出てきます。

プレイヤーは100枚の扉から1枚を選択します。

次に司会者は残り99枚の扉からヤギが入っている98枚の扉を開きます。

ここでプレイヤーは残った扉か最初に選んだ扉、好きな方を選択できます。どちらを選びますか?

こうなったとき少なくとも私なら扉を変えるでしょう。なぜなら最初に選んだ1枚は100枚から選んだ1枚。しかし次に残った1枚の扉は99枚の扉から答えを知っている司会者が厳選した扉なのです。どう考えても残った扉の後ろに車が入っている可能性の方が高いでしょう。

100枚から選んだ1枚の扉と、答えを知っている司会者により99枚から選ばれた1枚、感覚的にどちらが正解の確率が高いか分かりますよね。2枚から1枚を選択するのだから確率は同じだと思う人の方が少ないと思います。

あとは100枚あった扉を3枚に戻して考えても同じことなんですね。


この問題を今回改めて考えてみて、ふと思ったのです。最初に扉を選んだときの確率は3分の1です。逆に他の2枚の扉を除外した確率は3分の2なのです。3枚のうち2枚を除外したのですから。

ここで司会者が除外した2枚の扉のうち外れの1枚を開いた上で、好きな方を選択出来ると言っています。これは最初に選んだ1枚と、除外した2枚の好きな方を選んでいいよと言っていることと同じではないでしょうか。つまり同時に2枚の扉を開けるのと同じことです。

これなら扉を選び直した方が当たる確率が倍になるというのも納得です。


この問題は感覚的に納得出来ないこともあり、パラドックスと言われているようです。しかしアメリカの著名な数学者も間違えたようで、人間の確率に関する感覚というのは案外いい加減なものだということが分かります。


ちなみに何故モンティ・ホール問題というのかと言うと、このゲームをした番組「Let's make a deal」という番組の司会者がモンティ・ホールさんだったからだそうです。


果たしてこのモンティ・ホール問題が明智光秀とどう関係するのか「光秀の定理」をぜひ読んでみて欲しいです。