非金融系FPそばこと不確実な日々

2019年2月にCFPを取得しました。FPとして知っておいた方が良さそうなことを色々と書いていきます。

驚くほどシンプルで一生使える投資の極意

「驚くほどシンプルで一生使える投資の極意」という本を読みました。最近、書店でよく見かけていて読んでみようと思っていた本です。

気になりつつしばらく買わずにいたのは、パラっとめくってみると対話形式になっていて、初心者向けの内容かなと思ったからでした。

資産運用会社に勤めるベテランが新入社員に投資について教えていくという内容ですので、初心者向けといえばそうなのでしょうが、中身は濃く難しい部分もあるのではないかなと感じました。

まず人的資産、つまり働いてお金を長期間に渡って稼ぐ自分、それが大きな資産であるというところから始まります。よくある自己投資をして自分の価値を高めましょうといった面もあるのですが、後々でおっと思うところがあります。

人的資産価値を「ライプニッツ係数」というものを用いて求めているところは興味深かったです。これは生命保険の補償額を求めるときに使う係数なんだそうです。

次に分散投資について書かれています。私個人としてはここが最も目から鱗だったのです。

分散投資というと「卵をひとつのカゴに盛るな」という話があり、ここから全世界に分散しましょうとか投資する時間を分散しましょう、といった内容になっているのが一般的です。

この本で面白いところは今までに見てきた分散投資の説明は日本人に適さないという点です。先に書いた人的資産の話が関わってきます。私たち日本人の多くは日本国内で日本の会社から収入を得ています。つまり人的資産は日本という国に依存しています。資産の分散という観点から言えば極めて日本に集中投資しているということになります。

であるならば、これから購入していく金融資産は日本ではなく海外の資産に回すのが基本である、それでこそ分散だというのです。人的資産と金融資産を合わせて考えるということは、これまで考えたことがなかったので非常に刺激になりました。

例えば同じ会社に勤めている人同士が結婚すると、その世帯の家計はひとつの会社に依存してしまうからリスクが高いなんて話を聞いたことがあります。また自社株を購入する権利のある会社で、自社株を買うということは給料も金融資産も同じ会社に依存しているからリスクが高いなんてことも言われます。本を読みながら、そんなことを思い出しました。この例は人的資産を意識しているんですね。投資というとついつい金融資産にばかり頭が行きがちですが、生きていく上でのお金という観点からすると当然、働いて稼ぐお金、稼ぐ自分というのも意識しなくてはいけないですね。

この話でいくと、日本人で日本で働いているけれど外資系企業で、米ドルで給料を受け取っている(そういう人がいるのか分かりませんが)方は分散の仕方が変わってくるということになりますね。

さて、ではどういう商品を買えばいいの?といったときに、こういう本だとパッシブ投資やETFを買うことを推奨するという流れになります。しかしこの本ではそうはならないのです。

この本で株式投資は企業の経営者をモニタリングしている、議員を選挙で評価しているようなものだとしています。そういうモニタリングされている社会でないと回って行かないというのです。確かに議員に選挙がなければ何をするか分かったものではないです(笑)。

パッシブファンドは指標に連動する運用を採っています。つまり企業の経営者をモニタリングしていないということです。ですからパッシブファンドばかりでは世の中は成り立たないとしています。そんなこともあり、良いファンドマネージャーが運用するファンドを推奨しています。良いファンドマネジャーは企業経営者をしっかりとモニタリングしているということですね。

もちろんパッシブファンドを批判しているわけではなく、良い面も書いてあります。実際のところ多くのアクティブファンドは成績が悪いそうです。手数料の安いパッシブファンドが増えることは、高い報酬を貰って大したパフォーマンスを出せないアクティブファンドを淘汰する、そういう面での間接的なモニタリング機能があると言っています。

パッシブファンドの捉え方については、これまでにない考え方だったので非常に興味深いものでした。

他にも色々と新しい気づきのある本でした。見た目とは裏腹に、ちょっと初心者が最初に読むには難しい部分もあるなとは思いましたが、投資を始めた早いうちに読んでおきたい一冊かと思います。また投資をするかどうかに関わらず、社会人の早いうちに読んでおきたかったなあと感じる一冊でありました。