非金融系FPそばこと不確実な日々

2019年2月にCFPを取得しました。FPとして知っておいた方が良さそうなことを色々と書いていきます。

ワタミの宅食における労働基準法違反にもとづく是正勧告

9月15日に高崎労働基準監督署が、群馬県内にある「ワタミの宅食」の営業所に対して、労基法違反にもとづく是正勧告を行った、という報道がありました。

営業所長を担当していた女性が長時間労働などにより、精神疾患を発症したということです。

この女性は発症前の1ヶ月間に175.5時間の残業、27連勤という状態であったそうです。

また勤怠記録の改ざんがなされるなど、労働時間が正しく管理されておらず、残業代も適切に払われていなかったようです。

この件についてはワタミのHPでも訴えを認める内容が掲載されています。

残業代の未払い

勧告に関して報道では「残業代の未払いがあった」点が取り上げられています。

残業代の未払いというのは当然アウトです。

話によると固定残業代というのがあるそうで、これが30時間に相当するそうです。これを超えないように勤怠記録が改ざんされたということのようです。

ですから、30時間分は残業代が支払われていたのでしょう。しかしそれを超える分は払われていないわけです。

別に30時間を超えたなら、その分も残業代を払えばいいのです。しかし払っていない、そして勤怠を改ざんしている、ここに問題があります。

なぜ勤怠を改ざんするのか

これは私の勝手な想像ですが、勤怠を改ざんするのは監査が入った場合を憂慮してのことではないかと思います。

勤務としては175.5時間残業をしている、それに対して残業代は30時間分しか払われていない、労基署の人ならもちろん、ちょっと知識がある人なら、すぐにおかしいことに気付きます。

また時間外をする場合、労使協定で「○○時間まで残業をすることがある」という合意をとり労基署に届ける必要があります。36協定というものです。

例えば、今回の方は30時間ということで労使協定を結んでいたのかもしれません。もし30時間を超えて残業をする場合、改めて労使協定を結び届け出をする必要があります。これをしていたかどうかも疑問です。

こういった矛盾を隠すために改ざんしたと思われても仕方ありません。つまり悪いことだと分かっていてやっていたということになります。

管理職に残業代は必要か

ちょっと詳しい人だと管理職に残業代を払う必要はないということを言うかもしれません。

今回のケースでは、該当する方は「所長」だったそうで、役職的には管理職のように思われます。

そもそも管理職とは時間に縛られる働き方をしません。ですから残業代は不要ということになります。

しかし今回のケースでは、管理職の仕事をしつつ、現場の仕事もしていたそうです。スタッフの欠員を自ら補填するなどあったとのこと。その結果長時間労働になってしまっていたのです。

一時期、名ばかり管理職なんていう言葉が流行りましたが、まさにそれに当たるでしょう。

最近では管理職に対して、固定給として残業代を払うというケースも聞きます。これは労働時間に対して固定給だけでは足りないということに端を発しているのでしょう。

今回の方も固定残業代というものがあったようですから、初めから長時間労働が想定されていたのかな?という気がします。

残業時間175.5時間とは

1日8時間、週5日、4週間勤務したとすると、月の労働時間は160時間です。

175.5時間の残業とは、1月に2ヶ月分働いていたことになります。これは異常なことです。

ワタミは大企業ですから、とっくに働き方改革の対象となっていることと思います。

働き方改革によると、36協定を結んでも月の上限は45時間、年間で360時間という残業時間の上限があります。

これを超える場合は特別条項付きの36協定を結ぶことになります。

この場合でも月100時間を超えた残業は許可されません。

また2~6ヶ月の残業の平均が80時間を超えることも許可されません。

さらに45時間を超える残業がある月が、年に6回を超えてはいけません。

これを守らないと違法であるという指摘を受けることになるでしょう。

つまり175.5時間の残業というのはあり得ないことなのです。違法なのです。

結構上の世代のおじさんは長時間労働や徹夜を武勇伝のように語ります。

でもそもそも、きちんと時間管理をしていないから長時間の残業をすることになるのだという認識は必要だと思います。

ついでに言うと、残業代は1.25倍の割り増しで払うということは多くの方が知っていることでしょう。しかし残業時間が60時間を超えると1.5倍の割り増しで残業代を払うことになっています。

これは1.5倍の残業代を払えば60時間を超えて残業させてもいいよ、という話ではなく、60時間を超えるような残業をさせるなというメッセージととらえるべきでしょう。

改ざんに対処するには

今回のケースのように勤怠を改ざんされるという話は、残念ながらない話ではありません。

これはあってはならないことなのですが、社風によるのかもしれません。

何でも、手書きのメモでもいいので、自分でキチンと勤怠管理をしておくと、それが正当な勤怠として認められることがあるのだそうです。

ですから、同様のことで悩んでいる方は、自分で記録をしておくべきですし、しかるべき所に相談をするべきです。

それでもワタミの宅食に期待している

このようなことがあったワタミの食卓ですが、その事業自体は素晴らしいことだと思っています。

自分で食事を作れない、買い物に行けないお年寄り世帯や、介護食を必要とする世帯、などなど、これからの社会のニーズにマッチしています。

私の祖母も生前、要介護の状態にあったとき、何を食べさせるのがいいのか、ということで、ワタミの宅食にお願いして食事を配達して頂いたことがあります。

料理を作り、それを家庭に配達する、とても大変だ仕事でありますが、とても素晴らしい仕事であると思います。

それだけに働いている方が働きがいを感じる、幸せであるシステムと労働環境を構築して臨んで頂きたいと思うのです。