非金融系FPそばこと不確実な日々

2019年2月にCFPを取得しました。FPとして知っておいた方が良さそうなことを色々と書いていきます。

議決権の不適切集計はなぜ起きたのか?

東芝から端を発した

東芝において議決権が正しく行使されていないのではないか?という指摘がありました。

調査の結果、全体の1.3%にあたる1139通の議決書が無効になっていたことが明らかになりました。

議決権の集計は、東芝から三井住友信託銀行に委託されているものでした。

その後、三井住友信託銀行では同様の不適切な議決権集計が他にもあることを明らかにしました。その数は上場企業975社にのぼりました。

さらにその後、みずほ信託銀行でも371社で不適切な集計があったことが分かりました。

合計で1346社、国内の3割を超える上場企業で議決権の不適切な処理がなされていたことが明らかになりました。

議決権の集計に漏れがあった

議決権行使書は郵送されたものでした。集計から漏れたものは行使期限までに届いていないものでした。

となれば何の問題もないのですが、話はそう簡単なものではないようです。

というのも、日本では決算期が集中するため、株主総会が集中する時期があります。こういう繁忙期に期限ギリギリで議決権行使書が届くと処理が間に合わなくなってしまいます。

そこで本来の配達日より1日早く届くように、先付け処理というものを行なっていたのだそうです。

この本来なら期限内に届かなかったはずの議決権を集計していなかったというのが今回の問題です。

とは言え、日本郵政では先付け処理というものはなく、担当する箇所で(勝手に?)やっていたものが慣例化したものだということなのです。

それなら結局、期限に間に合っていないことになるのでは?と考えなくもありません。

この点については民法で「郵送などでの意思表示について、相手への到着時点で効力が発生する」となっていて、つまり経緯はともあれ期限内に届いた議決権は集計の対象になるのです。

ところで、先付けという慣例があったので議決権行使書が期限内に届いていたとは言え、そもそも送り主は期限に間に合うタイミングで議決権を送らなかったのでは?とも考えます。

これについては説明が難しくて理解出来なかったのですが、通常の郵便と「料金受取人払い郵便」では到着日が異なる点にあるのでは?とのことです。

議決権行使書は料金受取人払い郵便という、切手を貼らなくてよい(受取人が負担する)もので、これだと1日遅れて到着するようなのです。そしてそういう旨はどこにも記載されていないとのこと。

要は送り主は期限内に届くと思って郵送したのに、期限内には届かなかった。しかし先付けにより実際には期限内に届いていた、ということのようです。

議決権とは

そもそも議決権とは何でしょう。

議決権とは、Wikipediaによると

株式会社の社員である株主が、提案された議案に対して、賛否を表明し、株式会社の意思決定に直接に関与する権利。

とあります。

私もよく議決権を行使しますが、よくある提案というと、取締役の選任や配当金の決定があります。

株式を持つということの本質は、会社の一部を持つこと、つまり会社の責任を持つことと言ってもいいかもしれません。実際、大量の株式を持てば経営権や強力な発言力を持つことになります。

私のようなものでも、ちょっとだけ企業の経営権を持っているのです。

議決権とは、会社の重要な事柄を決定する権利です。これは持株数に応じて力を持つことになります。

今回の問題は、日本の上場企業3割超で、その重要な権利が、行使の意思があったにも拘らず無視されたことになります。あるいは選任されないはずだった人が取締役になっていたり、可決あるいは否決されるはずだった事項が翻っていた可能性を否定できません。

まして先付けは慣例化していたとのことですから、どれほど遡った問題なのか。

大変、由々しき問題ですし、国際的に日本企業の信頼を失う可能性があります。

議決権の電子化

今回の事態を受けて、議決権行使の電子化が加速することでしょう。

そもそも大量のデータを集計するのですから、電子化するべきなのです。その方が速いし正確です。

実は議決権の電子化はされています。全上場企業が対応しているか分かりませんが、少なくとも私が株を持っている企業ではネットから議決権を行使できます。ただ普及率が非常に低いということなのだそうです。

かく言う私も、議決権行使書を郵送しています。あえて言うなら、ハガキに可否の丸を付けて、情報保護のシールを貼り、ポストに投函する、という行為に、議決権を行使したなという気分を味わえるという訳の分からない理由によるものです。

普及していないのは年配者の投資家が多いからなのかもしれません。

仮想通貨でおなじみになったブラックチェーンの技術を使って、透明性の高いオンラインの議決権行使が出来るようになっていると、今朝のモーサテでやっていました。

需要があれば技術もサービスも続々と出てくるでしょう。

日本企業や日本市場の信頼回復や、そもそも正当に権利を行使出来るように、電子化普及が急務となることでしょう。

まあ実は、議決権を行使する気が本気であるなら、早々に郵送すればいいだけなんですけどね。